会長挨拶






     レーザセンシング学会・会長
     首都大学東京・名誉教授 長澤親生



 1972年に発足しましたレーザレーダ研究会が、2018年4月からレーザセンシング学会として、新たな船出を致しました。
 レーザレーダ(またはライダー)は1960年にT. H. Mainmanがルビーレーザの発振に成功した僅か3年後に、MITのG. Fioccoらが、このレーザをいち早くレーダに応用し、高度数10kmの大気からの散乱エコーの観測に成功しました。これは、レーザの指向性や単色性を存分に利用した優れたアクティブセンサとしての魅力的な将来性を示唆するものでした。
 レーザレーダの揺籃期に日本においても、レーザの応用を模索したレーザの研究者とレーザレーダに大気観測機器としての魅力にいち早く気づいた大気科学に関連する研究者がレーザレーダの研究を開始し、研究者間の情報交換の場として、レーザ・レーダ研究会が発足しました。レーザレーダ研究会は、その後、約半世紀にわたり、レーザレーダシンポジウムおよびその後継のレーザセンシングシンポジウムを計35回開催して参りました。さらに、これまで28回開催されてきたレーザレーダ分野で最も有力な国際会議であるILRC (International Laser Radar Conference)を、その内、計3回を本研究会が主体となり、日本国内で開催して参りました。

 本学会に集う研究者の多くは、ILRCやSPIE (Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers)やAGU (American Geophysical Union) などの各種国際会議において長年活躍してきており、国内においても日本気象学会、日本リモートセンシング学会、レーザー学会、日本大気化学会、地球電磁気・地球惑星圏学会、応用物理学会、計測自動制御学会、電気学会など広範な科学技術分野の国内各種学会においても活動してきた実績があります。これら広範なバックグラウンドを持つ研究者が一同に会し、基礎技術の研究開発から生まれるシーズと応用分野から求められるニーズをダイレクトに結びつけ、シナジー効果が発揮されやすい環境を作り出してきたのが、本学会の特徴だと思います。

 これまで約半世紀にわたるレーザ・レーダ研究会の活動は、国内外におけるこの分野の研究開発を牽引し、国内各分野の利用者への普及に尽力してまいりましたが、現在においては、大気環境計測のようなソフトターゲット測定においては、大気中のエアロゾルや黄砂などの微粒子の観測だけではなく、オゾン、CO2、金属原子などの微量成分観測や気温・風の多次元観測などへと大きく進展しております。また、NASAのCALIOPなどのように航空機搭載や衛星搭載レーザレーダなどにより従来測定機器と比較して異次元のデータ提供が可能なことが示されてきました。一方、車間距離の高精度測定のようなハードターゲットへの展開も目覚しく拡大しております。

 この状況に鑑み、この分野の研究開発や応用技術の普及などの更なる活性化を目指し、組織的にまた即応性を持って活動することを可能にする体制の整備を行うために学会化することにいたしました。関連する学会の皆様におかれましては、学会としましては、極めて小さく、未熟な組織であります故、特段のご高配を賜りたくお願い申し上げます。

 ここまで、レーザ・レーダ研究会として約半世紀にわたり着実に実績を積み重ねることに尽力され、今回の学会化に多大の影響を与えた諸先輩方および現学会員の皆様に感謝申し上げるとともに、レーザセンシング学会としての発展に今後もなお一層のお力添えをよろしくお願い致します。最後になりましたが、ここ数年の学会化への準備期間において、我々を叱咤激励し、熱心にご指導いただいたレーザ・レーダ研究会の前会長である小林喬郎先生のご努力に衷心より感謝申し上げます。 




    レーザ・レーダ研究会からレーザセンシング学会へ



 レーザレーダは、1960年にレーザが発明されると直ちにその応用分野として注目され、研究が開始されてきたものであり、大気や海洋、地形、衛星距離等の能動的な計測手段として発展してきているものです。とくに、レーザレーダによって大気の三次元的構造や大気成分の立体的な観測が可能であり、従来のマイクロ波レーダや光による受動的な(パッシブ型)センサとは異なる、新しい多くの機能がその中に見いだされました。わが国におけるレーザレーダの研究も先進諸外国と同時に開始され、1972年には国内のレーザ分野の研究者が集まり、第1回レーザレーダシンポジウムを仙台(作並)で開催致しました。これを基に東北大学稲場文男教授(当時)を会長としてレーザ・レーダ研究会が発足し、レーザレーダシンポジウムもその後約1年半の間隔で引き続いて開催が続けられ、活発な研究活動を展開してまいりました。さらに、1974年には第6回のレーザーレーダー国際会議 (ILRC)を仙台市で開催しました。

 その後、国内では高度経済成長期で公害による環境問題が多発し、これに応じて環境計測システムとしてのレーザレーダの研究開発も活発化し、レーザレーダシンポジウムもさらに活況を呈してまいりました。なお、第12回以降のシンポジウムは広くレーザを利用したセンシングの研究発表を行う場とするために、"レーザセンシングシンポウジウム"とその名称を変更して開催してきています。また、1994年にはICLAS*主催の第17回ILRCを仙台で開催し、1999年には独自の国際シンポジウムILSS'99を第20回レーザセンシングシンポジウムと合わせて福井で開催しました。さらに、2006年には第23回ILRCを奈良で開催しました。

 最近のフォトニックス技術の急速な発展に伴ない、ライダーの応用分野は、従来からの気象、大気環境などに加えて、自動運転技術や、トンネル等のインフラ保全監視、海洋、惑星探査などの広い分野へと拡大してきました。レーザ・レーダ研究会ではこれらの変革に対応するため、今後期待されるライダー技術や応用分野の調査を行うとともに、研究会組織のありかたについても検討を重ねてきました。その結果、2018 年 4 月より、「レーザ・レーダ研究会」を「レーザセンシング学会」と改め、さらなる発展を期すこととなりました。


*注) ICLAS (International Coordination-group for Laser Atmospheric Studies) は、International Radiation Commission (IRC)のワーキンググループ。



    沿革



 1972年7月 第1回レーザ・レーダシンポジウム開催(仙台、作並)
レーザ・レーダ研究会発足(会長:稲場文男、東北大学教授(当時))
(研究会発足以降、レーザ・レーダシンポジウムを継続的に開催。シンポジウム開催の詳細は文書アーカイブページに記載)
 1974年9月 ICLAS主催の6th International Laser Radar Conference (ILRC) (第6回レーザレーダ国際会議)を仙台で開催
 1988年5月 レーザ・レーダシンポジウムをレーザセンシングシンポジウムと改称
第12回レーザセンシングシンポジウムを岡山で開催
 1994年7月 17th International Laser Radar Conference(第17回レーザレーダ国際会議)を仙台で開催
稲場文男会長が、ILRCにおける若手研究者の優れた研究発表を表彰するInaba Prizeを創設
 1999年9月 レーザセンシングシンポジウムの第20回を記念して、International Laser Sensing Symposium’99/ 20th Japanese Laser Sensing Symposiumを福井で開催
 2006年7月 23rd International Laser Radar Conference(第23回レーザレーダ国際会議)を奈良で開催
 2008年9月 レーザセンシングシンポジウムにおける若手研究者の優れた研究発表を表彰する広野賞を創設
  2012年9月9日 稲場文男会長逝去
 2013年2月 小林喬郎、福井大学名誉教授を会長に選出
 2015年4月 研究会活性化のための委員会活動を開始
 2015年10月 ニュースレター創刊
 2018年4月 レーザ・レーダ研究会をレーザセンシング学会と改称
長澤親生、首都大学東京・名誉教授を会長に選出