レーザ・レーダ研究会からレーザセンシング学会へ



 レーザレーダは、1960年にレーザが発明されると直ちにその応用分野として注目され、研究が開始されてきたものであり、大気や海洋、地形、衛星距離等の能動的な計測手段として発展してきているものです。とくに、レーザレーダによって大気の三次元的構造や大気成分の立体的な観測が可能であり、従来のマイクロ波レーダや光による受動的な(パッシブ型)センサとは異なる、新しい多くの機能がその中に見いだされました。わが国におけるレーザレーダの研究も先進諸外国と同時に開始され、1972年には国内のレーザ分野の研究者が集まり、第1回レーザレーダシンポジウムを仙台(作並)で開催致しました。これを基に東北大学稲場文男教授(当時)を会長としてレーザ・レーダ研究会が発足し、レーザレーダシンポジウムもその後約1年半の間隔で引き続いて開催が続けられ、活発な研究活動を展開してまいりました。さらに、1974年には第6回のレーザーレーダー国際会議 (ILRC)を仙台市で開催しました。

 その後、国内では高度経済成長期で公害による環境問題が多発し、これに応じて環境計測システムとしてのレーザレーダの研究開発も活発化し、レーザレーダシンポジウムもさらに活況を呈してまいりました。なお、第12回以降のシンポジウムは広くレーザを利用したセンシングの研究発表を行う場とするために、"レーザセンシングシンポウジウム"とその名称を変更して開催してきています。また、1994年にはICLAS*主催の第17回ILRCを仙台で開催し、1999年には独自の国際シンポジウムILSS'99を第20回レーザセンシングシンポジウムと合わせて福井で開催しました。さらに、2006年には第23回ILRCを奈良で開催しました。

 最近のフォトニックス技術の急速な発展に伴ない、ライダーの応用分野は、従来からの気象、大気環境などに加えて、自動運転技術や、トンネル等のインフラ保全監視、海洋、惑星探査などの広い分野へと拡大してきました。レーザ・レーダ研究会ではこれらの変革に対応するため、今後期待されるライダー技術や応用分野の調査を行うとともに、研究会組織のありかたについても検討を重ねてきました。その結果、2018 年 4 月より、「レーザ・レーダ研究会」を「レーザセンシング学会」と改め、さらなる発展を期すこととなりました。2022年2月には「一般社団法人レーザセンシング学会」として正式に法人登記されました。


*注) ICLAS (International Coordination-group for Laser Atmospheric Studies) は、International Radiation Commission (IRC)のワーキンググループ。



    沿革



 1972年7月 第1回レーザ・レーダシンポジウム開催(仙台、作並)
レーザ・レーダ研究会発足(会長:稲場文男、東北大学教授(当時))
(研究会発足以降、レーザ・レーダシンポジウムを継続的に開催。シンポジウム開催の詳細は文書アーカイブページに記載)
 1974年9月 ICLAS主催の6th International Laser Radar Conference (ILRC) (第6回レーザレーダ国際会議)を仙台で開催
 1988年5月 レーザ・レーダシンポジウムをレーザセンシングシンポジウムと改称
第12回レーザセンシングシンポジウムを岡山で開催
 1994年7月 17th International Laser Radar Conference(第17回レーザレーダ国際会議)を仙台で開催
稲場文男会長が、ILRCにおける若手研究者の優れた研究発表を表彰するInaba Prizeを創設
 1999年9月 レーザセンシングシンポジウムの第20回を記念して、International Laser Sensing Symposium’99/ 20th Japanese Laser Sensing Symposiumを福井で開催
 2006年7月 23rd International Laser Radar Conference(第23回レーザレーダ国際会議)を奈良で開催
 2008年9月 レーザセンシングシンポジウムにおける若手研究者の優れた研究発表を表彰する広野賞を創設
  2012年9月9日 稲場文男会長逝去
 2013年2月 小林喬郎、福井大学名誉教授を会長に選出
 2015年4月 研究会活性化のための委員会活動を開始
 2015年10月 ニュースレター創刊
 2018年4月 レーザ・レーダ研究会をレーザセンシング学会と改称
長澤親生、首都大学東京・名誉教授を会長に選出
 2020年4月 レーザセンシング学会誌創刊
 2022年2月 一般社団法人レーザセンシング学会発足
 2022年6月 長澤親生、東京都立大学・名誉教授を会長に選出
 2024年6月 阿保 真、東京都立大学・教授を会長に選出